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データ管理の中立性から考えるデータ民主化

Posted by local knowledge on May 19th, 2023

昨年創刊したモダン・タイムズは「データの民主化により、様々な新しい社会的価値を創造するためのノウハウを提供するメディア」であることを標榜していますが、この「データの民主化」は意外と難しい概念なので、少しここで補足説明させていただくことにします。

まず民主化(democratization)とは何かを普通に調べると、ここにあるように、The process of becoming a democracy. すなわち「政治体制として民主主義が拡大する過程」のことを指すようですが、モダン・タイムズはそのような政治的な主張をしたいわけではありません。何しろ民主主義を目指すことが正しいのかどうかもよくわからないし、昨年来の様々な政治家による「民主主義に対する攻撃」という上滑り(=板に付いていない)なセリフに半端ない違和感を感じた方も多いはずです。そもそも自分の主義主張やイデオロギーを特定の何かに“固定”しなければならないはずもありませんし「みんなが仲良くやれればそれでいいじゃねえか」と思いますがね。平日は社会民主主義だけど週末は無政府主義になるような人物のほうが付き合ってて面白いかもしれませんし、カネがなくなったらリバタリアン(libertarian)と友達になりたいと思ったりもしますが(冗談ですよ)、それにしてもなぜ人はイデオロギーの奴隷になりたがるんでしょうねえ。不思議ですねえ。

モダン・タイムズにおける「データの民主化」に関する主張は、ここで中尾彰宏氏(東京大学)が主張する「The action of making something accessible to everyone」、つまり「誰でも使えるようにしてね」という意味合いが大半を占めます。ただし、ここで問題になるのは主にプライバシー関連の動的な権利処理でして、WirelessWireNewsでも過去に「プライバシーとパーソナルデータ」という大上段なテーマでかなり長期間ディスカッションしたのですが、正直、なんだかよくわからないまま幕を閉じました。

ところが最近、集英社の季刊誌『Kotoba』で2023年春号からスタートした木村草太氏(東京都立大学)の新連載「幸福の憲法学」の中に「プライバシー権を自己情報コントロール権と解釈したあたりから話がおかしくなったんじゃねえの?」という実に鋭い指摘を発見しました。これ結構な慧眼だと思います。いわゆるプライバシーバイデザインの弊害を割とクリアに説明してくれています。興味のある方はぜひご一読ください(どうでもいいですが、同号のカズオ・イシグロの特集も読み応えあります)。

「誰もが使える」は通常、非常に安価もしくは無料で利用できることを指しますが、もう一つの意味合いとしては選択肢(option)が豊富に用意されていること、という意味合いもあるかな、とも思います。同じ目的の達成に対して複数の選択肢があるなら、自分自身の経済的あるいは時間的な状況に応じて使い分ければいいだけの話になりますからね。何か特定の道具にロックインされて楽しい人はあまりいないでしょうから、状況や気分に応じて使い分けることができればベストです。なので谷川岳は天神平まではロープウエイで行くという楽チンな選択肢がありがたいわけです(星野リゾートがオーナーになっちゃったんですね。なんとなくがっかり)。

「データの民主化」における「データ」はほぼ「情報」という意味で捉えていただいて問題ないのですが、その中でもやはりデジタル・データをどうハンドリングしていくべきか、という話がメインになります。ここで注意して欲しいのはデジタルデータが持つ再帰性(=アルゴリズムやソフトウエア的な処理次第でどんなものにでも化ける準備が整ったRAWデータの状態)という性質なのですが、これはまた稿を改めてお話させていただきたいと思います。

いずれにしてもこの「データの民主化」を技術軸、制度軸、そして価値の軸から語れるバランスのとれたアタマのいい人って俺の周りにいたか?としばらく考えていた時にふっと浮かんだのが橋田浩一氏(理化学研究所・革新知能統合研究センター分散型ビッグデータチームリーダー)です。データ管理の中立性から考えるデータ民主化というテーマで、一部のプラットフォーマーへのデータの集中や、自社が保有するデータの適切な取り扱いにおける課題が噴出している状況をどう打破できるかについて語っていただきます。

ローカルナレッジ 発行人:竹田茂

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