本の場

感性を揺さぶる企画展のつくりかた ― 学芸員・松山聖央さんに聴く現代日本社会のなかの美術 【後編】

Posted by local knowledge on December 9th, 2023

公立美術館を辞して大学の研究員に転じた松山さんは、現在、武庫川女子大学を中心にあちこちで精力的に展示やワークショップをキュレーションされています。

コロナ禍で通常のリアルイベントが開催できなかったためzoomを使って行われた2021年3月の「マン盆栽」のワークショップでは、創始者であるパラダイス山元氏(マンボ・ミュージシャン)の解説を受けながら盆栽を鉢に植えフィギュアを配し、参加者全員が作品世界の「情景」に込めた思いを発表し合ったそうです。

写真作家ふなだかよ氏の「もの」との対峙を追体験するワークショップ「もの と わたし と」では、日常的に愛用していた「もの」(松山さんの場合は手帳と折り畳み傘)を高いところから落としてその落下途中を写真に撮影するという創作行為を通じて、参加者は馴染みの道具の知らなかったすがたに不意に出遭う体験をしたそうです。

2023年5~7月には、武庫川女子大学で「モノの棲み家、ヒトの棲み家—中田静さんの「自宅」より」という大きな企画展示も行われています。昭和から平成にかけて大阪に暮らした一般人・中田静さんが自宅に遺した膨大な生活財や日用品の数々を、同大附属総合ミュージアムが調査・研究してきた成果を活かし、「自宅」におけるヒトとモノの関係に着目して展示されました。同展は外部資金を獲得して実現されています。

これらの企画には、人間の感性全般や人工物と人間の関係性を見つめる美学研究者・松山さんの興味関心が通底しています。実際の展示やワークショップの企画実践と、美学や思想にまつわる思索や研究のあいだには、日々どのような往還があるのでしょう。参加者の感性を深く揺さぶる企画をつくるために、どんな理論的裏打ちが隠されているのでしょう。

12月14日の「本の場」では、松山さんからご自身の手掛けた魅力的な展示やワークショップの事例をご紹介いただきながら、それらを実現させたバックグラウンドとしての研究活動の一端まで語っていただきます。

本イベントに関連する松山さんお薦めの一冊

つかふ: 使用論ノート

つかふ: 使用論ノート

著者:鷲田 清一

出版社:小学館

発売日:2021/1/14

2,200円(amazon.co.jp 2023年11月9日時点)

開催概要

  • 感性を揺さぶる企画展のつくりかた ― 学芸員・松山聖央さんに聴く現代日本社会のなかの美術 【後編】
  • 2023/12/14 (木) 19:30~21:00

お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。ウェビナー終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。

毎月2回程度の「本の場」ウェビナーのほか、「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに原則としてご参加いただけます。

  • Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。
    お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。
  • チケットの購入期限は当日12月14日の18:00までとさせていただきます。
  • 主催:本棚演算株式会社
松山聖央(まつやま まお)
松山聖央(まつやま まお)

武庫川女子大学生活美学研究所助手。神戸大学を拠点とする神戸雰囲気学研究所メンバー。北海道大学理学部卒業。同大学院文学研究科修士課程修了。2011年6月より北海道立近代美術館に学芸員として勤務。2020年4月より現職。企画・担当した展覧会に「ガレとアール・ヌーヴォー ガラスの中の自然」(2013)、「生誕70年・没後40年記念 深井克美展」(2019)、「北海道151年のヴンダーカンマー」(2020)など。近年は近現代ドイツの思想を基盤とする環境美学の研究に取り組む。おもな論文に「マルティン・ゼールにおける『美的承認』概念の美学的射程」(『美学』71[2]、2020)。