2024/1/30(火曜)19:00~20:30
【レクチャ・シリーズ】:住宅をつくる人々の新しい物語(第2回)
20世紀を見逃すな - フラーとイームズの教えー
松村秀一(早稲田大学)
Posted by local knowledge on January 30th, 2024
しばしば建築の特殊性について次のように語るのを聞くことがある。「建築は一般の工業製品とは違って一品生産だから」。けれども、モノとしての今日の一般的な建築をバラバラに解体してみると、H型鋼にせよ、集成材にせよ、サイディングにせよ、アルミサッシにせよ、便器にせよ、キッチンにせよ、ほとんどは量産された工業製品だ。建築が一品生産だなどというのは、多くの場合ごくごく表面的なことであり、建築をモノとして見れば、建築設計者がデザインした一品生産品ではなく建材メーカーがデザインして市場で売っている工業製品を買い集めてアセンブルしているに過ぎない。だとしたら、どうして建築のデザインは創造的で面白いなどと言えるだろうか。
この問いに答えを見つける上では、建築が量産という概念と出合った20世紀に針を戻してみるのが一番良い。特に、量産を建築に持ち込む方法において、全く異なる態度をとった二人の工業先進国アメリカの巨人、バックミンスター・フラーとチャールズ・イームズの時代に先駆けた挑戦は、21世紀の私たちにも大きなヒントを与えてくれる。さて、どんなヒントなのか。一緒に見てみよう。今回の能登半島地震における日本家屋の惨状から考えられることについても若干コメントする予定。(松村)
開催概要
イベント名称 | 住宅をつくる人々の新しい物語(第2回) 20世紀を見逃すな - フラーとイームズの教え |
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開催日時 | 2024/1/30 (火) 19:00~20:30 ※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。 |
話題提供者 | 松村秀一(まつむら・しゅういち) 早稲田大学理工学術院総合研究所上級研究員・研究院教授(専門は建築構法・建築生産) |
イベント形態 | Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。 お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。 |
参加料 | 1,500円(税込) |
参加方法 | このウェビナー(Webinar)のみ申し込む、 または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する 「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに月額500円でご参加いただけるお買い得なメニューです(1回のイベント毎に500円ではなく、月1回500円のお支払いで、全てのイベントに参加できます) |
購入期限 | チケットの購入期限は当日1月30日の18:00までとさせていただきます。 |
主催 | ローカルナレッジ編集部(スタイル株式会社) |
参考図書1:宇宙船地球号 操縦マニュアル (ちくま学芸文庫)
バックミンスター・フラー(Buckminster Fuller:1895-1983)は、米国の建築家ですが、彼の名前が一気に広がったのは彼が1960年代に提唱した「宇宙船地球号(Spaceship Earth)」という世界観でしょう。ある意味、最大限の「公共」の概念が地球という閉ざされた空間であること、そしてその地球を宇宙船になぞらえ、その乗務員である私たち人類が地球をどう“操作”していくべきかについて語られています。現在流行中のSDGsの元祖、と言えるかもしれません。建築・デザインの分野では富士山レーダーにも採用されたフラードーム(ジオデシック・ドーム)が有名ですが、その他、たくさんの発明があります。
参考図書2:イームズ・ハウス/チャールズ&レイ・イームズ (ヘヴンリーハウス-20世紀名作住宅をめぐる旅 2)
イームズ・ハウス/チャールズ&レイ・イームズ (ヘヴンリーハウス-20世紀名作住宅をめぐる旅 2)
著者:五十嵐太郎、後藤 武、岸 和郎
出版社:東京書籍
発売日:2008/7/26
2,640円(amazon.co.jp 2024年1月25日時点)
チャールズ・イームズ(Charles Eames:1907- 1978)は、米国のデザイナー・建築家。妻のレイ・イームズとの共同作業が有名。性質の異なる素材の組み合わせを通じて、20世紀の工業デザインに大きなインパクトを与えました。ハーマンミラー(Herman Miller)から発売された「椅子」は誰もが知っている名作、ですね。ここでご紹介する本はチャールズ&レイ・イームズが設計した自邸の写真集。図面資料も公開されています。ここからこの夫婦が意図した家のあり方や思想が明らかになっていきます。
松村秀一(まつむら・しゅういち)
早稲田大学理工学術院総合研究所上級研究員・研究院教授(専門は建築構法・建築生産)
2023年1957年神戸市生まれ。1980年東京大学建築学科卒業。1985年東京大学大学院博士課程修了。工学博士。1986年より東京大学講師、助教授、教授、特任教授を経て2023年より現職。日本建築学会元副会長。現在、HEAD研究会代表理事、建築技術支援協会代表理事、団地再生支援協会会長も務める。日本建築学会賞(論文、2005年)、都市住宅学会賞(著作、2008年、15年、16年)、日本建築学会著作賞(2015年)等受賞多数。主な著書に『新・建築職人論-オープンなものづくりコミュニティ』(学芸出版社)、『建築の明日へ』(平凡社新書)、”Open Architecture for the People – Housing Development in Post-War Japan”(Routlede)、『空き家を活かす-空間資源大国ニッポンの知恵』(朝日新書)、『ひらかれる建築-「民主化」の作法』(ちくま新書)、『建築-新しい仕事のかたち 箱の産業から場の産業へ』(彰国社)、『箱の産業』(彰国社)、『「住宅」という考え方』(東京大学出版会)、編著に『和室礼讃』(晶文社)、『和室学』(平凡社)、など。