本の場

地域には支援しなければならない多くの人がいる ― 名古屋市守山図書館・志段味図書館の多彩な挑戦

Posted by local knowledge on February 27th, 2024

名古屋市守山図書館・志段味図書館では、「みんなのがん教室」のほかにも多彩でユニークなイベントが定期的に開催されています。特に、医療・健康や障害者福祉をテーマにしたものの質と量は、一般的な公共図書館のイメージからは大きくはみ出している印象です。

既に20回を数える手話によるおはなし会「しゅわしゅわおはなし会」。継続的に開催するうちに聾者と聴者の交流も深まり、地元の手話サークルとのつながりも広がってきています。聾者の親御さんが手話をできないケースは多く、絵本や昔話の手話による読み聞かせを体験したことがない聾者も多いのだと、藤坂館長は利用者から聞かれたそうです。「手話は言葉」なのだから双方向のコミュニケーションこそが大切なのだと、子どもたちを含めて多くの聴者が体験的に理解することは、地域をひとつ優しく強くするように感じました。

「発達性ディスレクシアセミナー」「発達性ディスレクシア相談会」も、地元の専門的な団体と連携しながら定期的に開催されています。セミナーでは、発達性ディスレクシア当事者の中学生がプレゼンを行い、お母さんが学校での周囲の無理解から来る困難を切々と訴えられたことも。「司会進行してた僕でさえ動揺してしまうほどでした」と藤坂館長は話しておられました。

ほかにも「障害者就労支援」「フードドライブ」「アルコール依存症」等、どのイベントも、地元の専門家とつながりながら繰り返し何度も開催していくことによって地域で支援を必要としている人たちにじわじわ届いていく、という手法は共通しているように思います。また、当事者同士だけでなく多様な地域の人たちが集まって専門家も交えて互いに交流することで正確な情報への理解が広まっていく、という流れも共通していて、公共図書館という場の大きな可能性を感じます。

地元書店と連携したイベント、書店店頭での図書館員のおススメ本展示といった書店連携施策もまた、出版不況にあえぐ地元書店には必要な間接的支援だと言えるでしょうか。

地域には支援しなければならない人が多くいる。

2月29日の「本の場」では、守山図書館・志段味図書館兼任館長の藤坂康司さんから、「みんなのがん教室」以外のさまざまなユニークなイベントについて詳しくご紹介いただきながら、地域の多様な支援の場としての公共図書館の可能性について考えていきたいと思います。

本イベントに関連する藤坂さんお薦めの一冊

『聴覚障害×当事者研究―「困りごと」から、自分や他者とつながる』(金剛出版)

『聴覚障害×当事者研究―「困りごと」から、自分や他者とつながる』(金剛出版)

著者:松﨑 丈

出版社:金剛出版

発売日:2023/8/7

3,740円(amazon.co.jp 2024年2月9日時点)

開催概要

イベント名称地域には支援しなければならない多くの人がいる ― 名古屋市守山図書館・志段味図書館の多彩な挑戦
開催日時2024/2/29 (木) 19:30~21:00
※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。
話題提供者藤坂康司(ふじさかこうじ)
名古屋市守山図書館・志段味図書館 館長
イベント形態Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。
※お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。
参加料400円(税込)
※月額サブスクリプションメンバーは不要
参加方法このウェビナー(Webinar)のみ申し込む
または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する
※サブスクリプションメンバーは月額500円のお支払いだけで、毎月3〜4回実施される「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに参加可能です。
購入期限チケットの購入期限は当日2月29日の18:00までとさせていただきます。
主催本棚演算株式会社
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。
藤坂康司(ふじさかこうじ)
藤坂康司(ふじさかこうじ)

広島県呉市出身。書店(株式会社フタバ図書、丸善株式会社)、出版社(株式会社偕成社)に勤めた後、2020年2月より名古屋市志段味図書館館長(統括責任者)・司書として勤務。現在は名古屋市守山図書館館長も兼任。指定管理者「名古屋TRC・長谷工グループ」所属。