2024/3/14(木曜)19:00~20:30
【レクチャ・シリーズ】:住宅をつくる人々の新しい物語(第3回)
ジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé)に見る電脳時代のクラフトマンシップ
松村秀一(早稲田大学)
Posted by local knowledge on March 3rd, 2024
20世紀の建築、特に先端的なテクノロジーとデザインの関係を巡って、孤高の、しかも偉大な足跡を残したジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé:1901-1984)。エミール・ガレが名付け親で、13歳から鍛冶屋に弟子入りをし、ものづくりを身体で覚えたプルーヴェは、19世紀のクラフトマンシップと20世紀の工業化技術を結び付けた独自の建築活動を展開した。そのプルーヴェの足跡は、デジタル・ファブリケーションという道具を手に入れた現代の建築のあり方やつくり方を考える上で、必須の参照対象だと言えるだろう。今回は、一緒にどっぷりとプルーヴェの世界に浸ってみよう。
先ずは、プルーヴェがル・コルビュジェ世代の若い建築家たちと交流を持つようになり、建築の部分のデザインと製作を任されるようになる1920年代の作品群。そして、プルーヴェが建築全体のデザインと製作を主導した記念碑的な作品、後に「曲げ鋼板の祭典」や「元祖ハイテク建築」と呼ばれることになる1938年の「クリシー人民の家」。当時の最先端の工作機械を装備し、航空機エンジニアを初め、先端的な多分野の技術者たちが次々にその門を叩いたという伝説の工場「マクセヴィルのプルーヴェ・アトリエ」での幸福な創作の時代、1940年代後半の作品群。大株主の意向により自ら設立し経営してきたその工場からプルーヴェが追い出された1952年の不幸な事件の経緯とその現代的な意味。そして、プルーヴェが求め続けた創作環境が今日に実現する可能性について。そのあたりをご一緒に見ていきたいと思う。(松村)
開催概要
イベント名称 | 住宅をつくる人々の新しい物語(第3回) ジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé)に見る電脳時代のクラフトマンシップ |
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開催日時 | 2024/3/14 (木) 19:00~20:30 ※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。 |
話題提供者 | 松村秀一(まつむら・しゅういち) 早稲田大学理工学術院総合研究所上級研究員・研究院教授(専門は建築構法・建築生産) |
イベント形態 | Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。 ※お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。 |
参加料 | 1,500円(税込) ※月額サブスクリプションメンバーは不要 |
参加方法 | このウェビナー(Webinar)のみ申し込む、 または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する ※サブスクリプションメンバーは月額500円のお支払いだけで、毎月3〜4回実施される「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに参加可能です。 |
購入期限 | チケットの購入期限は当日3月14日の18:00までとさせていただきます。 |
主催 | ローカルナレッジ編集部(スタイル株式会社) |
今回の「ジャン・プルーヴェ(Jean Prouvé)に見る電脳時代のクラフトマンシップ」講義終了後にぜひお読みいただきたい参考文献をご紹介します。
松村 秀一 著「『住宅』という考え方-20世紀的な住宅の系譜-」(東京大学出版会)
プレハブ、マンション、建売、ニュータウン……「住宅」とは何者か? 20世紀はかつてない居住の形態・建築の方法を生み出した。その構想の発端まで立ち返り、さまざまな角度から光をあてて現在への道程を検証、いま私たちが身をおくごくありふれた家、町、風景を問い直す。図版多数。
松村 秀一著 「『住宅ができる世界』のしくみ」(彰国社)
本書の出発点は、現代の住宅や町が、建築にかかわる人の意志とは無関係につくられ続けていることにある。こうした住宅ができる現実の世界のしくみを明らかにし、専門家が自由と責任をもって住宅をつくる世界へと変える道筋を示す。住宅をめぐる川上から川下までを視野に入れて、住宅像自体の作り変えを提案する。
早間玲子著「構築の人、ジャン・プルーヴェ」(みすず書房)
プルーヴェは戦後、復興期のフランスで、人々の暮らしの再建に必要な住宅を直ちに供給すべく、最新技術を応用した革新的な建設法を駆使して、公共施設、個人住宅、学校建築、学生用の家具などを次々とつくりだしてゆく。晩年にはポンピドゥー文化センター国際競技設計の審査員長も務めたが、生涯、公認の建築家の資格を得ることはなかった。プルーヴェの手になる構築物は、その部材のひとつひとつにまで、構造を知り、素材に従うことで生まれる正直な「かたち」が息づいており、頑健でありながらどこか愛らしい佇まいの建築や家具は、時をこえ人々を魅了しつづけている。20世紀デザイン史で異彩を放つ真の「構築家」の作品と人生を、アトリエ・ジャン・プルーヴェのプロジェクト・チーフとして協働した建築家・早間玲子の編訳でおくる。
ジャン・プルーヴェ著、カトリーヌ・デュモン・ダヨ著「ジャン・プルーヴェ」(TOTO出版)
プルーヴェは自らをデザイナーでも建築家でもなく「建設家constructeur」とみなし、建築、デザインを合理的な工業生産の論理によって刷新することを試み、仕事は、家具から住宅、公共建築まで広範囲に及んでいる。機械と生産の関係を職人的なものづくりの思想のうちに、20世紀らしい方法で体現した建設家ジャン・プルーヴェの全貌を紹介した1冊。
松村秀一(まつむら・しゅういち)
早稲田大学理工学術院総合研究所上級研究員・研究院教授(専門は建築構法・建築生産)
2023年1957年神戸市生まれ。1980年東京大学建築学科卒業。1985年東京大学大学院博士課程修了。工学博士。1986年より東京大学講師、助教授、教授、特任教授を経て2023年より現職。日本建築学会元副会長。現在、HEAD研究会代表理事、建築技術支援協会代表理事、団地再生支援協会会長も務める。日本建築学会賞(論文、2005年)、都市住宅学会賞(著作、2008年、15年、16年)、日本建築学会著作賞(2015年)等受賞多数。主な著書に『新・建築職人論-オープンなものづくりコミュニティ』(学芸出版社)、『建築の明日へ』(平凡社新書)、”Open Architecture for the People – Housing Development in Post-War Japan”(Routlede)、『空き家を活かす-空間資源大国ニッポンの知恵』(朝日新書)、『ひらかれる建築-「民主化」の作法』(ちくま新書)、『建築-新しい仕事のかたち 箱の産業から場の産業へ』(彰国社)、『箱の産業』(彰国社)、『「住宅」という考え方』(東京大学出版会)、編著に『和室礼讃』(晶文社)、『和室学』(平凡社)、など。