「寄り合い」とは「寄り添いつつ折り合いをつけること」
Posted by local knowledge on February 23rd, 2024
LocalKnowledge(ローカルナレッジ)がまだ「新教養主義宣言」を名乗っていた頃に「うたの力とスピリチュアリティ ~苦難のなかにある人にうたがもたらす力について~」と題して、島薗(進)先生からのご紹介で、音楽療法士の中山ヒサ子さんにご登場いただいたことがあります。おかげさまでこのオンラインイベントは主催者(竹田)をも癒してくれる稀有なものとなりました(主催者が癒されてどうする、という気もしますが)。そしてその時と同じ感動がもたらされたのが、先日ご登場いただいた 京都市北区の独立型ホスピス・薬師山病院に音楽療法士として勤務する岡下晶子さんです。
目を閉じて、耳をすましてしか伝わってこないリアリティは「視覚の奴隷」になりがちな私たちに、古くて新しい気づきを提供してくれます。それが必ずしも音楽や会話である必要もない、とさえ思います。音(おと)自身に内在するメッセージに、耳ではなく身体全体を預ける、という態度や時間が私たちには必要なのでしょう(尤も、当日はオートハープの名手でもある岡下さんの弾き語りを堪能させていただいたのですが)。ただし、ホスピスという施設は、2020年のコロナ禍以降、かなりダメージを受けているそうです。身体的に「寄り添う」ことが難しいからですね。だからこそでもあるのですが、ここでは楽器の演奏が大いに役立つ、というわけです。
ところで「寄り添う」と似た言葉に「寄り合い」があるかと思います。『忘れられた日本人』(宮本常一、岩波文庫1984)に収録されている、対馬における寄り合いの進め方はみなさんすでにご存知かと思いますが、ここには日本らしい会議(会合)の原点があります。私は「寄り合い」は「寄り添いつつ折り合いをつけること」だと勝手に考えていて、これが大企業で繰り広げられる「結論の出ない議論を何度も繰り返す会議」に比べ、はるかに合理的かつ民主的なのですね。寄り合いは、一見非効率な進め方をしているように見えるけれど、たった1日で合意形成や根回しが終了する、というわけです。
名古屋市守山図書館・志段味図書館では先週ご紹介した「みんなのがん教室」のほかにも多彩でユニークなイベントが定期的に開催されています。特に、医療・健康や障害者福祉をテーマにしたものの質と量は、一般的な公共図書館のイメージからは大きくはみ出していて、ここでは原点としての「寄り合い」のようなものが再現されている、と感じます、2月29日のLocalKnowledge・本の場では、守山図書館・志段味図書館兼任館長の藤坂康司さんから、「みんなのがん教室」以外のさまざまなユニークなイベントについて詳しくご紹介いただきながら、地域の多様な支援の場としての公共図書館の可能性について考えていきたいと思います。みなさんぜひご参加ください。
ローカルナレッジ 発行人:竹田茂
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