2024/4/23(火)19:30~21:00
自分たちで「歴史」をのこす ― 『コロナ禍の声を聞く 大学生とオーラルヒストリーの出会い』から学ぶ身近な歴史のつくり方
Posted by local knowledge on April 7th, 2024
2023年11月に大阪大学出版会から『コロナ禍の声を聞く 大学生とオーラルヒストリーの出会い』という本が出版されました。大阪大学文学部日本学専修でオーラルヒストリーを学ぶ学生たちが2020年度から2022年度にかけて行った多くの聞き取りを、有志の学生からなるプロジェクトチームが1冊の本に編集したものです。
コロナ・パンデミックが始まって入学式も対面授業も無かった新入生は何を思いどのように行動したのか、留学生はどんな厳しい状況に置かれていたのか、職員は大学としての対応や対策をどうやって決めてどう遂行していったのか、コロナ禍における大学の実態が多くの当事者の生の声を積み重ねることによってリアルに描き出されていきます。
本づくりに参加した学生たちは、コロナに翻弄され続けた同世代の大学生活を記録に残したいという強い気持ちを支えに、授業外の大きな負担をこなしていったそうです。
3月に関西で行われた出版記念イベントでは、プロジェクトの主要メンバーが楽しさと充実感いっぱいに本づくりを振り返る姿を目にすることができました。安岡先生と出版会の編集者のあいだで本づくりの企画が持ち上がったあと、そもそもその企画に挑戦するのかという意志決定から始まって、出版会内でゴーサインをもらうための企画書を作成し、みんなで構成を考えそれに合わせてどの聞き書きを選ぶかをまた集まって考え、聞き書きのどの部分を収録するかを考えて各自担当分の要約も作成し、果ては本のデザイン検討にまで参加するなど、本づくりのあらゆる工程を自分たちが主体となって取り回せたことは、本当に貴重な経験だったことでしょう。先生の放任主義もとい先生との信頼関係や、編集者の細やかな配慮も大きかったのだろうと感じられもしました。
安岡先生は、オーラルヒストリーは社会が大きな変化に見舞われる時期に盛んになる手法だ、と或るインタビューでおっしゃっています。明治維新のあとや第二次世界大戦のあと、どうしても忘却されてほしくない多くの人々の経験を聞き取り書き残していこう、という動きが強まったのだそうです。世界の経済や政治の状況が大きく変わり、グローバルにネット社会が到来し、国内では少子高齢化が進み大きな自然災害が多発する現代は、まさにオーラルヒストリーを望む声が高まる条件が揃っているのかもしれません。
4月23日の「本の場」では、安岡先生からオーラルヒストリーの意義と手法、その可能性を伺ったうえで、プロジェクトメンバーの学生のみなさんや大阪大学出版会の担当編集の方にも加わっていただき、本づくりの実際を詳しくお聴きします。
たとえば地域の図書館や博物館が中心になって、最初から出版まで見据えてオーラルヒストリーを収集するといったプロジェクトが展開できれば、新しい地域史編さんの活動として若い世代も含めた幅広い住民を巻き込むことができるかもしれません。地域が中央発の文化を消費するだけでなく、自分たちの手で文化的な創造と発信を行えるようになれば、地域にとってさまざまな相乗効果が期待できるのではないでしょうか。
本イベントが取り上げる本
開催概要
イベント名称 | 自分たちで「歴史」をのこす ― 『コロナ禍の声を聞く 大学生とオーラルヒストリーの出会い』から学ぶ身近な歴史のつくり方 |
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開催日時 | 2024/4/23 (木) 19:30~21:00 ※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。 |
話題提供者 | 大阪大学大学院人文学研究科准教授・安岡健一さん |
ゲスト | 大阪大学日本学専修「コロナと大学」プロジェクトの学生のみなさん 大阪大学出版会・板東詩おりさん |
イベント形態 | Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。 ※お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。 |
参加料 | 400円(税込) ※月額サブスクリプションメンバーは不要 |
参加方法 | このウェビナー(Webinar)のみ申し込む、 または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する ※サブスクリプションメンバーは月額500円のお支払いだけで、毎月3〜4回実施される「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに参加可能です。 |
購入期限 | チケットの購入期限は当日4月23日の18:00までとさせていただきます。 |
主催 | 本棚演算株式会社 |
安岡健一(やすおかけんいち)
1979年神戸生まれ。大阪大学大学院人文学研究科現代日本学研究室准教授。専門は日本近現代史、とくに戦後史。オーラルヒストリーという方法論についても研究している。主な著書に『「他者」たちの農業史』京都大学学術出版会、2014年がある。