本の場

『日本のまちで屋台が躍る』を編集者・中村睦美さん、屋台実践者・孫大輔さんと一緒に読む ― いま屋台を引いてまちに出ると何を突破できるのか

Posted by local knowledge on October 11th, 2024

2023年12月、『日本のまちで屋台が躍る』という本が出版されました。発行元は「屋台本出版」、ISBNも付いている凝った造本のスタイリッシュな一冊ですが、実はこの本が作りたくて集まった3人の方々による自費出版・自主流通本です。

今の日本の各地には、個人で屋台を作ってまちを歩いている方がけっこういらっしゃるのだそうです。お酒や食事を出したり(大阪、堺、東京)、本を売ったり(鳥取)、健康相談に乗ったり(東京・鳥取)、前半の実践編では、実に多様な屋台の活動とその紆余曲折や思いが、実践者へのインタビューによって紹介されます。今回ゲスト出演いただく鳥取大学医学部の孫大輔先生も実践者のお一人で、「医者、街に出る ─ 屋台でウェルビーイングを」という章に登場されています。

「人をまるごと診る」医者として
活動する孫大輔さんは、
困りごとを言い合える地域のゆるいつながりや、
生きがい、人間関係から、
健康やウェルビーイングのあり方を研究している。
病院というある種の権威的な場所から
街へ飛び出し、屋台を介して
街の人と交流する孫さんにお話を伺った。

(p.85)

紹介される実践例はかなり非日常的でぶっ飛んだ印象を受けるものが多く、孫先生の実践はいちばん穏やかな部類かもしれません。でも、すべての事例を通じて、今のこの国でふつうに暮らしていると制度やルールのために触れることができなくなっている何か、遊びや余白、あるいは混淆や再生といったことにまつわる何かを、鮮烈に感じ取ることができます。通勤電車では隣り合った見知らぬ人と話すことはまずありませんが、屋台でなら、会話は自然に生まれ継続もする、ということが実感としてよくわかります。

後半のレクチャー編では、人類学、哲学、社会学等さまざまな分野の研究者が、インタビュアーの質問に答えるかたちで屋台に関連する考察を展開されます。実践編で感覚を活性化されてから読む学術的な考察は、一般的な書籍に比べてより深い理解をもたらしてくれる気がします。中には、これは内容的に実践編なのでは? といったフィールド体験を語る研究者もおられ、学問の世界もなかなか幅広く奥深いです。

10月17日の「本の場」では、この興味深い一冊を自主製作された「屋台本出版」唯一の書籍編集者・中村睦美さんから、この本の成り立ちや制作、流通・販売の裏話を伺いながら、孫先生も交えて、今の日本社会における屋台的なるものの可能性について、みなさんと一緒にお話ししてみたいと思います。

この本は初版千数百部が、いわゆる取次ルートに乗らない自主流通本として独立系書店や通販を中心に販売され、1年足らずで既に1,000部超を売り上げているそうです。中身の新奇さと面白さから当然の売上部数だとは思いますが、調べてみると、公共図書館や大学図書館には未だほとんど所蔵されていませんでした。出版産業の危機が叫ばれ、全国津々浦々に本が行き渡る流通インフラが壊れ始めている昨今、このような自費出版物がより広く全国の読者に届くためには誰がどのように動いたら良いのか、「本の場」ではそんなテーマにもスポットライトを当てていこうと考えています。

本イベントが取り上げる本

日本のまちで屋台が躍る

『日本のまちで屋台が躍る』

編者:中村睦美 今村謙人 又吉重大

出版社:屋台本出版

発売日:2023/12/13

2,530(税込)

『日本のまちで屋台が躍る』

開催概要

イベント名称『日本のまちで屋台が躍る』を編集者・中村睦美さん、屋台実践者・孫大輔さんと一緒に読む ― いま屋台を引いてまちに出ると何を突破できるのか
開催日時2024/10/17 (木) 19:30~21:00
※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。
話題提供者中村睦美(なかむら むつみ)
フリー編集者
ゲスト孫大輔(そん だいすけ)
鳥取大学医学部地域医療学講座准教授
イベント形態Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。
※オンライン参加をお申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。
参加料400円(税込)
※月額サブスクリプションメンバーは不要
参加方法このウェビナー(Webinar)のみ申し込む
または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する
※サブスクリプションメンバーは月額500円のお支払いだけで、毎月数回実施される「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに参加可能です。
購入期限チケットの購入期限は当日10月17日の18:00までとさせていただきます。
主催本棚演算株式会社
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。
中村睦美(なかむら むつみ)
中村睦美(なかむら むつみ)

1993年生まれ。編集プロダクションにて建築批評、思想、文化などに関する書籍、webの企画・編集・制作に携わる。社会で起こっていることをまなざしつつ現在独立準備中。

孫大輔(そん・だいすけ)
孫大輔(そん だいすけ)

鳥取大学医学部地域医療学講座准教授、一般社団法人コミュニティウェルビーイング研究所代表理事。
1976年生まれ。東京大学医学部卒業後、同学医学部附属病院で腎臓内科医、北足立生協診療所で家庭医として勤務。2012年から東京大学医学教育国際研究センター講師を務め、2016年からは映画制作やモバイル屋台カフェを通じた地域アプローチを実施。2020年に鳥取県大山町に移住し、現在、非常勤家庭医および鳥取大学医学部教員として地域医療に携わる。