2024/10/28(月) 19:00~20:30
レクチャーシリーズ:未来のメディアの作り方(第3回)
輿論(よろん)と世論(せろん)
—メディアの世論操作を破壊し輿論を復活させることは可能か/総選挙関連の報道も講評
佐藤卓己(上智大学文学部新聞学科教授/京都大学名誉教授)
Posted by local knowledge on October 22nd, 2024
現在、「世論」と書いて「せろん」と読む人は激減しています。しかし、本来、「よろん」とは「輿論」のことであり、明治天皇の五箇条の御誓文」第一条の草案における「万機公論に決し私に論ずるなかれ」を根拠とした「公開討議された意見」を指す言葉でした。これに対して「世論(せろん)」は討議・議論を踏まえない勝手気ままな意見、という意味で、輿論とは区別して利用されていました。しかし、1946年(昭和21年)に制定された当用漢字表から「輿」が落ちたことで、「輿論」と「世論」を区別しなくなり、「輿論」という概念は事実上消滅したのが現代、と言えるでしょう(ただし当用漢字表は1981年(昭和56年)に廃止され、新たに告示された常用漢字表で「輿」は復活しています)。
いずれにしても「世論」が意味の面積を極めて広く取り、幅広く普及した結果、マスコミは精度の低い「世論調査(よろんちょうさ)」を繰り返し、政治もまたそれを利用すると同時に、国会では行政が代筆したものを読み上げ合うだけという茶番(=輿論の消滅)が繰り広げられ、YouTubeではエキセントリックなプロバガンダが数百万を超えるPV(ページビュー)を稼いだり、というわけで「本当の民意」なるものはむしろその存在感をどんどん希薄なものにしているように思います。
今回の「未来のメディアの作り方」は『輿論(よろん)と世論(せろん)』を副読本にして、私たちはこれから「輿論」を再生させることができるのか、を議論したいと考えます。ついでに、ですが、来る10月27日(日曜日)は「第50回衆議院議員総選挙・第26回最高裁判所裁判官国民審査」の投票日ですから、その翌日の月曜日に実施される今回の「未来のメディアの作り方」では、言論空間としての今回の解散・総選挙に関連した一連のメディア報道や立候補者の選挙活動についても佐藤さんから講評を頂こうかな、と考えています。
開催概要
イベント名称 | レクチャーシリーズ:未来のメディアの作り方(第3回) 輿論(よろん)と世論(せろん)ー日本的民意の系譜学 |
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開催日時 | 2024/10/28(月) 19:00~20:30 ※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。 |
話題提供者 | 佐藤卓己(さとう・たくみ) 上智大学文学部新聞学科教授/京都大学名誉教授(専攻:メディア史) |
参考図書 |
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イベント形態 | Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。 ※お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。 |
参加料 | 1,000円(税込) ※月額サブスクリプションメンバーは不要 |
参加方法 | このウェビナー(Webinar)のみ申し込む、 または月額500円(税込)のサブスクリプション サブスクリプションに登録する ※サブスクリプションメンバーは月額500円のお支払いだけで、毎月複数回実施される「ローカルナレッジ」が開催する全ての有料セミナーに参加可能です。 |
購入期限 | チケットの購入期限は当日10月28日の18:00までとさせていただきます。 |
主催 | ローカルナレッジ編集部(スタイル株式会社) |
佐藤卓己氏(上智大学教授/京都大学名誉教授)による「レクチャーシリーズ:未来のメディアの作り方」は、近い将来私たちが構築すべき言論空間、そしてその言論空間を展開するに相応しい形式や運用のあり方を探るために、彼の膨大な著作の中から重要度の高いものを副読本として毎回1冊取り上げ、来年(2025年)3月まで月1回のペースで合計7回の講義を実施します。
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第2回(9月30日実施、終了)
言論統制(中央公論新社、2024)
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第3回(10月28日実施、終了)
輿論(よろん)と世論(せろん)(新潮社、2008)
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第5回 2025年1月24日17時から
テレビ的教養(一億総博知化への系譜)(岩波現代文庫、2019)
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第6回 2025年2月21日17時から
流言のメディア史(岩波新書、2019)
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第7回 2025年3月21日17時から
メディア論の名著30 (ちくま新書、2020)
佐藤卓己(さとう・たくみ)
1960年広島県生まれ。京都大学文学部史学科を経て1986年同大学院修士課程修了。ミュンヘン大学近代史研究所留学後、1989年京都大学大学院博士課程単位取得退学。東京大学新聞研究所助手、同志社大学文学部助教授、国際日本文化研究センター助教授、京都大学大学院教育学研究科教授を歴任。2024年3月に京都大学を早期退職し、同年4月に上智大学文学部新聞学科教授に就任(現任)。