地域人による地域創生

【新シリーズ開始、参加無料】
本と地域の結びつきはこんなに多様だ! ―『「本」とともに地域で生きる』を著者・南陀楼綾繁さんと読む

(写真左 撮影 小倉快子)

Posted by local knowledge on November 22nd, 2024

2015年から2023年まで地域創生のための総合情報誌として発行された雑誌『地域人』のコンテンツを基にした、新たな書籍シリーズ「地域人ライブラリー」が刊行開始されました。これを機にローカルナレッジでは、元『地域人』編集長で現在は大正大学出版会編集長の渡邊直樹さんをコーディネータとして、新シリーズ「地域人による地域創生」を立ち上げます。

12月5日の第1回では、「地域人ライブラリー」初回ラインナップの中から『「本」とともに地域で生きる』を取り上げ、著者・南陀楼綾繁さんからお話しを伺います。

本書は、「一箱古本市」の創始者でもある南陀楼さんが『地域人』で連載されていた日本各地の本屋、図書館、ローカルメディアの見聞録をまとめたものです。圧巻はローカルメディアをまとめた第三章。

「ミニコミ、自費出版、私家版、リトルプレス、郷土誌、フリーペーパー、ZINE……。さまざまな呼び方があるが、基本的に書店流通に乗らない、少部数の自主出版物という点では同じだ。それらのうち、地域に関するものを「ローカルメディア」としてとらえ、毎月の連載で紹介した。」(p.184)

およそ50のローカルメディアやプロジェクトが、見開き2頁で次から次へと紹介されていきます。どのローカルメディアも、その地域・そのタイミングならではの作り手の思いやこだわり、物語りがめいっぱい詰まっているのが伝わってきます。

山口県周防大島でみかんづくりとの兼業で生活誌を出版する「みずのわ出版」、全国で最も早く過疎が始まったと言われる中国地方山間部で地域横断的に有志が集まって定期刊行している『みんなでつくる中国山地』、地元中学の美術部と郷土部がかつて制作した絵本を再発見して復刊した「エディション・ノルト」(新潟県魚沼市、現在は神戸に移転)、地元の老舗百貨店の突然の閉店にショックを受けその埋もれた歴史を掘り起こして『さよならデパート』を出版し「歴史を知って本を書くことで」地元愛が湧いたという「スコップ出版」(山形市)、一戸から九戸まで「戸(のへ)」の付く地域の文化を発掘しようとUターン者が始めた『のへの』(青森県八戸市)、「北海道の発行者、東京の写真家、島根の被写体、鳥取のデザイナーという、地域を超えたコラボレーションから生まれた写真集」(p.278)『島根のOL』、……。

挙げ出すと止まらなくなりますが、全編を通じて、まさに「ローカル」な「ナレッジ」が満ち溢れているのです。

第一章「本屋」は、前今井書店グループ相談役の永井伸和さん、東京荻窪の「本屋 Title」店主・辻山良雄さんの長めのインタビューから始まり、古書店を含む各地の本屋が取り上げられます。脚光を浴びる独立系書店の数々に挟まって、100年以上続く老舗古本屋がどのように代替わりし社会の変化に合わせて今どう変わろうとしているのか(熊本市・舒文堂河島書店)、といった部分には南陀楼さんならではの視線を感じます。佐渡島に図書館、書店、古本屋、カフェ、と本のある場所がこんなに多様にあるんだ、と知ったのは新鮮な驚きでした。

第二章「図書館」も、海士町やぎふメディアコスモスといった公立の有名どころだけでなく、小規模な私設図書館がいくつも取り上げられているのが、『地域人』という雑誌の性格をよく表していそうです。

南陀楼さんは、同書「おわりに」を「『地域人』で仕事をした6年間は濃密だった。」という一文から始めておられます。本当に、このような『地域人』での取材活動は、なんて贅沢で羨ましいお仕事だったことでしょう。

本と地域の両方に関心を持つあらゆる方に、手に取っていただきたい一冊です。

本イベントが取り上げる本

「本」とともに地域で生きる

「本」とともに地域で生きる

著者:南陀楼綾繁

出版社:大正大学出版会

発売日:2024/11/5

1,980円(amazon.co.jp 2024年11月18日時点)

開催概要

イベント名称本と地域の結びつきはこんなに多様だ! ―『「本」とともに地域で生きる』を著者・南陀楼綾繁さんと読む
開催日時2024年12月5日 (木) 17:00~18:30
※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。
話題提供者南陀楼綾繁
ライター、編集者
コーディネータ渡邊直樹
編集者、大正大学客員教授・大正大学出版会編集長
イベント形態Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。
※お申込みいただいた方および「ローカルナレッジ」月額サブスクリプションメンバーの方には、参加URLを事前にメールにてお送りします。
参加料無料
参加方法このウェビナー(Webinar)のみ申し込む
購入期限チケットの申込期限は当日12月5日の17:00までとさせていただきます。
主催ローカルナレッジ編集部
※プログラムの内容・時間などは予告なく変更となる可能性があります。ご了承ください。
南陀楼綾繁(なんだろう あやしげ)
南陀楼綾繁(なんだろう あやしげ)

ライター、編集者。1967年島根県出雲市生まれ。2005年から谷中・根津・千駄木で活動している「不忍ブックストリート」の前代表。全国各地で開催される「一箱古本市」の生みの親でもあり、各地で開催される多くのブックイベントにも関わる。石巻市で本のコミュニティ・スペース「石巻まちの本棚」の運営にも携わる。著書に『町を歩いて本のなかへ』、『蒐める人』、『古本マニア採集帖』、編著に『中央線小説傑作選』、『中央線随筆傑作選』など。『地域人』の図書館や本屋特集では、企画から参加し、取材・執筆した。また、同誌の「コアコア新聞」にローカルメディアの記事を46回連載。
(撮影 亀貝太治)

渡邊直樹(わたなべ なおき)
渡邊直樹(わたなべ なおき)

編集者。大正大学客員教授。大正大学出版会編集長。
東京・大塚生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業後、平凡社で「太陽」を編集。その後、「ドリブ」「SPA!」「Panja」「週刊アスキー」などを創刊、編集長をつとめる。J-castの設立に参加後、「婦人公論」編集長。2004年~2016年まで大正大学文学部、表現学部教授。その間も「をちこち」(国際交流基金)編集長、年刊「宗教と現代がわかる本」(2007年~2016年 平凡社)の責任編集を兼務。2015年9月、「地域人」創刊、2023年5月まで編集長。2024年11月、「地域人ライブラリー」創刊。

参考図書

生きるための農業 地域をつくる農業

生きるための農業 地域をつくる農業

著者:菅野芳秀

出版社:大正大学出版会

発売日:2024/11/5

1,980円(amazon.co.jp 2024年11月18日時点)

生きものを甘く見るな

生きものを甘く見るな

著者:養老孟司

出版社:大正大学出版会

発売日:2024/11/5

1,980円(amazon.co.jp 2024年11月18日時点)

『地域人』第50号 特集「本屋が楽しい まちが楽しい!」

『地域人』第50号 特集「本屋が楽しい まちが楽しい!」

出版社:大正大学出版会

発売日:2019/10/3

1,100円(amazon.co.jp 2024年11月18日時点)

『地域人』第75号 特集「本屋は続くよ」

『地域人』第75号 特集「本屋は続くよ」

出版社:大正大学出版会

発売日:2021/11/10

1,100円(amazon.co.jp 2024年11月18日時点)

『地域人』第33号 特集「こんな図書館のあるまちに住みたい」

『地域人』第33号 特集「こんな図書館のあるまちに住みたい」

出版社:大正大学出版会

発売日:2018/5/10

1,100円(amazon.co.jp 2024年11月18日時点)

『地域人』第42号 特集「図書館とまちづくり」

『地域人』第42号 特集「図書館とまちづくり」

出版社:大正大学出版会

発売日:2019/2/8

1,100円(amazon.co.jp 2024年11月18日時点)