雑誌と地域と公共言論空間を考える
Posted by local knowledge on November 29th, 2024
私(竹田)自身、出自が雑誌社ということもあり、最近の雑誌の凋落ぶりには目を覆いたくなるところがありますが(電通報によれば、ピーク時に5,000億円を超えていた雑誌広告市場は現在は1,000億程度だそうです)、南陀楼綾繁さんの『「本」とともに地域で生きる』の第3章を読むと、私自身の“雑誌観”が実はかなり古臭いものであることに気づきます。南陀楼さんによれば「ミニコミ、自費出版、私家版、リトルプレス、郷土誌、フリーペーパー、ZINE……。さまざまな呼び方があるが、基本的に書店流通に乗らない、少部数の自主出版物という点では同じだ。それらのうち、地域に関するものを「ローカルメディア」としてとらえ、毎月の連載で紹介した。」(p.184)とあります。これは(従来の)雑誌というよりはむしろ限られた地域だけに届ける手紙あるいはラジオに近いメディアである可能性が高く、雑誌が様々な地域から再定義され始めた予兆と見ることができるかもしれません。このあたりの事情を、著者の南陀楼さん、そして編集を担当された『地域人ライブラリー』編集長の渡邊直樹さんの対談でお送りするのが今週木曜日(12月5日)に開催する「本と地域の結びつきはこんなに多様だ! ―『「本」とともに地域で生きる』
です。
https://www.localknowledge.jp/2024/11/1768/
翌日の金曜日( 12月6日)は佐藤卓己氏(上智大学教授/京都大学名誉教授)による「レクチャーシリーズ:未来のメディアの作り方」の第4回として、『負け組のメディア史』と『『キング』の時代』を取り上げます。『負け組のメディア史』 は、明治後半から昭和にかけて数々の雑誌・日刊紙を刊行した出版人・野依秀市(のより・ひでいち:1885-1968)の評伝です。野依は言論人というよりは、自らを広告媒体と意識した上で売り込んでいく、一種のブラックジャーナリズムに近い存在でしたが、メジャーな総合雑誌や一流の全国紙が伝えているものとはあきらかに異なる世論(せろん)を代弁していたのも事実です。一方、日本初の100万部を達成し雑誌の黄金時代を築いた伝説的雑誌『キング』を「参加型、娯楽重視のラジオ的雑誌」という視点で捉え直すことで、それが実現した公共性を解明したのが、『『キング』の時代』です。『キング』は大正13年(1924)に大日本雄弁会講談社(現在の講談社)野間清治(のま・せいじ、1878- 1938)によって創刊されました。同時代の『中央公論』などに比べ、知識人からは低く見られていた雑誌ですが、この時代に発見されていくことになる「大衆」の熱烈な支持を得て、100万部を超える支持を獲得できたわけです。ただし、『キング』はテレビが本格的に普及し始めた昭和32年(1957)に廃刊になります。『キング』や野依秀市が作った公共言論空間を改めて学び直し、現在の公共言論空間を分析し、そして近未来の公共言論空間のあり方を考える講義としたいと思います。
https://www.localknowledge.jp/2024/11/1783/
最新コラムはニュースレターでお送りしています。お申し込みは下記から
ニューズレター登録はこちら