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一般法人の貸借て?の参入規制は緩和されたけど…

Photo : 田植え / kelly marken / Adobe Stock

Posted by local knowledge on December 13th, 2024

平成21年(2009年)に施行された改正農地法の最大の特徴は、一般法人の貸借での参入規制が緩和されたことにあります。実際、この改正農地法の施行後の4年間に 1,261(株式会社は777)の法人が参入しました。しかし実際には「適正に農地を利用していないときは契約を解除」とか「集落での話し合いへの参加、農道や水路の維持活動へ の参画」あるいは「地域の調整役として責任を持って対応できる担当者がいる」という具合にかなり強い縛りがあって、経営者目線で見ると「うわ。面倒なことになりそう」な気配が満載です。特に一番最初の「適正に農地を利用していないときは契約を解除」という判断を下すのはおそらく地主である農家でしょうから、素人が一所懸命やっていてもプロの農家から見たら「ダメだお前。適正利用してない。土地返せ」と言われるだろうことは容易に想像できるところです。

何しろ農業は「仮説検証サイクル(投資回収サイクルでもある)が最短でも1年かかる」のが普通ですから、お店を出した当日から日銭が稼げるような商売とは根本的に構造が違います。性根がすわってなければできません。農業に参入することを決断した企業の射程は少なくとも数十年の継続を見据えているはずですから、例えば借り始めて数年で「返せ」と言われたら借金しか残らない状態になるのは目に見えているので、そこに裁量権が持てないのであれば怖くて参入できません。

一定要件を満たせば土地所有も可能という具合に改正農地法がさらに改訂されたらしいのですが、それでも「譲渡制限のある株式会社、農事組合法人、合名・合資・合同会社でなければならない」とか「売上の50%以上が農業じゃなきゃダメ」だの「農業関係者が総議決権の原則として4分の3以上を占めること」に加え「役員の半分以上は農業従事者でなければならない」など、まああまり現実的な規制緩和ではありません。農業は戦後一貫して「緩和が実は更なる規制になっているような意味不明な緩和」を重ねてきた印象があります。そういう世界で、行政との丁々発止を繰り返しながら何十年も農業に従事してきた菅野芳秀さんのような方の話は、何というか、説得力が違います。

今夜の『生きるための農業/地域をつくる農業』は今年最後のLocalKnowledgeの講義です。忘年会特異日第一弾の金曜日のような気もしますが、ぼんやり酒を飲むよりもビジネスマンとしての菅野さんの話に耳を傾けたほうが、2025年の迎え方が少し変わると思いますよ(講義を聞いた後に追っかけ忘年会に出席という手段も)。先週に引き続き、ベテラン編集者・渡邊直樹さんとの対談という形式で開催します。ぜひご参加ください。無料です。
https://www.localknowledge.jp/2024/12/1807/

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