
オンラインカジノ初の実態調査 賭け金計1兆2400億円「か 」
The total amount of money bet is 1.24 trillion yen
Photo : 大阪湾ベイエリア / Tsuboya / Adobe Stock
Posted by local knowledge on April 1st, 2025
金額を聞いて「え。嘘でしょ?」と思った方も多いはずです。「1兆2400億円」は直感的に“おかしい”と感じます。見出しが「か」で終わっているので、報道しているNHK自身「ホントかな」と思っているフシがある。ともあれ、どのような調査を実施したのかが(ある程度)公開されているので、とりあえずはその調査方法を検証してみましょう。
まず「今回の調査は警察庁から委託を受けた民間のリサーチ会社が、15歳から79歳までの2万7145人を対象に、WEBアンケート形式で行いました」ということなので、パネルの数(2万7145人)は十分ですが「WEBアンケート方式」になっていますから、母集団(=プールされているモニター)はおそらくその「民間のリサーチ会社」が保持している「ウェブ調査依頼に対応しますよ」という形でパーミッション(許可)をとった人(ネットリサーチ・モニター:数十万人単位で保持しているはず)でしょう。つまり固定電話のユーザーだけに実施するRDD(Random Digit Dialing)調査同様、「パネルの母集団が相当偏っている」ことに留意してください。「現在も利用している」と回答した人は全体の2%ということですから、このネットリサーチ・モニターの2%が犯罪者ということになりますが、ここでまず「マジすか?」と反応してください。本当に利用している人が正直に答えるとは思えないですし(調査という形の捜査である可能性が高いと考えるはず)、ネットリサーチ・モニターは「調査に答えた時の報酬としてのポイント等をコツコツ貯めている真面目な人たちである可能性が高い」からです。
ただし、それ以上のこの調査の最大の誤謬は「これを日本の総人口の年代別構成比に当てはめると」とやってしまったことですね。ここで「現在の利用者が196万7000人」という数字が出てきてしまいます。これに月額の掛け金(52,000円)を12倍した数字に乗じれば1兆2400億円になる、というわけです。ネットリサーチから日本人全体の利用動向や市場規模などを推定するのが御法度(=母集団の要素がサンプルとして平等に選ばれていない、つまり代表性がない)であることくらいは知っているはずですから、おそらく今回の調査は警察庁のプロバガンダ、つまり「(違法な)オンラインカジノがとんでもないことになっている」というキャンペーンを貼りたかったのだ、と理解しておくにとどめておくのが正解でしょう。
調査の信頼性、という意味で最も怪しいのが「メディアが実施する調査」です。例えば「月刊茅ヶ崎」という雑誌の創刊を目論んでいる会社(実在しませんよ)があったとすれば、創刊前調査でおそらく「最も住みたい街が茅ヶ崎(神奈川県)になるような調査」を実施するはずです。つまり「欲しい結果が最初から決まっていて、その結果が誘導できるようにパネルと設問(e.g. 「海がそばにある街がいい:そう思う/あまりそう思わない」など)を企画する、ということになります。そしてその調査結果を創刊号の特集などとして展開し「(あたかも中立的な調査であるようなフリをして)住んでみたい街No1に茅ヶ崎が選ばれました!」と持ち上げるわけです。ご苦労様です。
また(これも一般論ですが)「調査報道」が信頼に値するのはその調査を実施する機関(メディア等)が、広告収入などでとても儲かっているときだけですね。記者や編集者を遊ばせておく余裕があるときは、メディアによる調査も、例えば(少し古いですが)ウオーターゲート事件(Watergate Scandal)におけるワシントン・ポストのように、良質なものが出てきます。逆にメディア経営が経費削減なども含めた「効率重視」になってくるとまあ大抵ロクなことやりません(効率を重視した建物が安普請になるのと同じ)。いずれにしてもメディアにどっぷり浸かっていた連中が立ち上げた調査はあまり信用しない方がいいでしょう。私自身、前職では似たようなことを繰り返してましたからね。
なお、カジノの名誉のために申し上げれば、ですが、一般に「そのギャンブルが良心的か否か」は還元率(控除率とも言います)、すなわち掛け金に対する手数料の割合を比較するのが良いでしょう。一概に高いほど悪質とは言い切れない(そこで得た収入を何らかの形で社会還元することがある)のですが、ギャンプラーの立場から見た時に最悪なのが55%をピンハネする「宝くじ」です。ガソリン同様の納税あるいは寄付行為と割り切って購入するのであればそれはそれでありでしょうがギャンブルとしては最低です。一方、カジノは手数料が極めて低い(多くの場合10%未満)のが普通ですから、手数料だけを見れば意外と良心的です。街中にパチンコ店(還元率は宝くじほど悪質ではありませんが、店舗が(釘の位置などを変更することで)期待値をかなり縦横無尽にコントロールできます)が跳梁跋扈しているのに比べれば「2030年秋ごろの開業を目指す、カジノを含めた統合型リゾート施設」はかなり健全な気がします。
さて、長々と書いてきましたが、私はオンラインカジノの違法性や調査報道のウソを見抜くリテラシーを身につけよう、と言いたいわけではなく、自分が瞬間的に感じた“違和感”を大切にして欲しい、と思っているだけです。私たちは、伝統のある大手メディアに接したとき、その内容に対して感じた違和感を瞬間的に封印して、報道内容を鵜呑みにしてしまいがち(いわゆる「ハロー効果」ですね)ですが、その(あなた自身が感じた)違和感が実は正しかった、ということが往々にして発生します。あるいは「いつもと同じ会議室でいつもと同じメンバーでの打ち合わせなのに、その会議室に入った瞬間、その日だけ感じたある種の違和感」みたいなのがあったりするじゃないですか。「空気感」という言葉を使ったりしますが。いずれにしても、ある程度の人生経験がある自分が感じた違和感は十分信用に値する、ということに自信を持っていただきたい。特にその人生経験が「ある種の現場感覚」を根拠にしている場合は強い、という気がします。
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