
2025年5月15日(木)19:30~21:00
文学研究で地域おこしは可能か ― 鳥取大学地域学部・岡村知子先生に『杉原一司全集』出版の背景を聞く
Posted by local knowledge on April 2nd, 2025
ご縁があって『杉原一司全集 歌文・対談座談会篇』という本を手にする機会がありました。編者は「岡村知子(鳥取大学地域学部准教授)」、「杉田佳凜(鳥取大学附属図書館職員)」、「田中仁(鳥取大学名誉教授)」、発行「国立大学法人 鳥取大学」、発売「今井出版」、と奥付に記載されています。
「杉原一司」という歌人はまったく知らなかったのですが、岡村先生によるまえがきは、
杉原一司は、大正15年に鳥取県八頭郡丹比村(現・八頭町)に生まれ、昭和25年に23歳の若さで病没した歌人である。鳥取県立鳥取商業学校在学中に短歌に目覚め、太平洋戦争末期に前川佐美雄に師事、応召・復員を経て、敗戦後は塚本邦雄とともに短歌の革新を志した。
と始まり、
…一連の営みは、現代短歌史・戦後思想史・鳥取の地域史を再考する上で貴重な示唆を与えてくれる。
と結ばれていました。
「鳥取の地域史を再考する上で」という文言や奥付記載の情報が気になってこの本の成立経緯をもっとよく知りたいと思い、岡村先生や、杉原一司の甥で総務省の地域力創造アドバイザーでもある安藤隆一氏とやりとりを重ねて、さまざま教えていただきました。一昨年惜しまれつつ閉店した定有堂書店のミニコミ誌『音信不通』界隈での安藤氏らの動きが、出版に繋がる底流として脈々と存在していたという事情にも、なんとも鳥取らしい豊かさや面白みが感じられました。
やりとりの中でいただいた『文学と地域 ― 自他が尊重される<場>を問う』という岡村先生の単著には、鳥取という地域にまつわるさまざまな文学或いは文学的諸活動についての興味深い研究が収められています。専門的な研究の中身は一旦措くとして、地域おこしを使命とする地域学部という組織の中で文学研究を行っておられる岡村先生の、たとえば以下のような文章に強く引きつけられました。
一司に限らず、既存の文学史には位置づけられていない、地元の文学者を発掘・顕彰しようというエネルギーの源泉には、その地に生まれ育った人々の自己実現の欲求が潜んでいるように思われる。個人のアイデンティティが、“鳥取”という地域に拡張される時、同郷の作者の作品が全国的に認知されることが、住民の文化意識を向上させ、経済的な面でも地域を活性化させることに達成感を覚える心理が生まれる。そして、埋もれていた作品を全国に向けて発信するためには、価値の保証書が必要だということで、研究者に資料が託され、研究を依頼されることがある。しかし文学的価値は、作品を読み味わうことで個人の心が救われるところに存在するのであり、直接何かの役に立つこともなければ、何かに役立てるべく捏造することも不可能である。(『文学と地域』p.198「<コラム3>地域で文学的価値を見失わないために」)
鳥取大学地域学部では、文学研究に対して、「地域に残された一次資料と向き合い、翻刻・調査・考察して得られた成果を活字化することが、(現在のところ)推奨されている」(同p.197)そうです。その中で岡村先生たちは、『杉原一司宛 前川佐美雄書簡』(2021)、『杉原一司 塚本邦雄 往復書簡』(2022)、そして今回の『杉原一司全集』と着実に出版実績を積み重ねてこられました。
文学をきちんと研究すること或いは味わうことと、地域おこしのような集団的で経済的な営みとのあいだには、ある種の相容れなさがあるのかもしれない、ということは何となくわかります。ですが、要請されているのが地域おこしそのものではなく出版という具体的な実践であるのなら、そこには、「出版を通じた地域おこし」というかなり普遍的な可能性が拓けるようにも思います。
5月15日の「本の場」では、鳥取の地で10年にわたって実践されてきた「文学と地域」の研究と教育のリアルについて、岡村先生に直接伺います。
“シビックプライドと文化”にご関心をお持ちの教育・文化・地域おこし関係者のみなさま、ぜひご参加ください。
本イベントが取り上げる本
開催概要
イベント名称 | 文学研究で地域おこしは可能か ― 鳥取大学地域学部・岡村知子先生に『杉原一司全集』出版の背景を聞く |
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開催日時 | 2025年5月15日 (木) 19:30~21:00 ※お申込みいただいたみなさま全員に見逃し配信を行います。イベント終了後一両日中にはアーカイブ動画配信を開始し、約1週間のあいだご視聴いただけます。 |
話題提供者 | 岡村知子(おかむら ともこ) 鳥取大学地域学部准教授 |
ゲスト | 安藤隆一 杉原一司の甥、地域力創造アドバイザー(総務省) |
イベント形態 | Zoomミーティングを利用したオンラインイベントです。 ※お申込みいただいた方には参加URLを事前にメールにてお送りします。 |
参加料 | 無料 |
参加方法 | このウェビナー(Webinar)のみ申し込む |
購入期限 | チケットの購入期限は当日5月15日の18:00までとさせていただきます。 |
主催 | 本棚演算株式会社 |

岡村知子(おかむら ともこ)
1981年、山口県生まれ。大阪府立大学大学院人間社会学研究科博士後期課程修了。博士(言語文化学)。日本近代文学専攻。2015年より、鳥取大学地域学部准教授。単著に『太宰治の表現と思想』(双文社出版 2012年4月)、『文学と地域』(大阪公立大学出版会 2024年1月)がある。『杉原一司全集 歌文・対談座談会篇』(今井出版 2025年2月)の編者(共編)。